【論文】A high‐accuracy map of global terrain elevations
東大生研の山崎さんの論文
Yamazaki, D., Ikeshima, D., Tawatari, R., Yamaguchi, T., O’Loughlin, F., Neal, J. C., … Bates, P. D. (2017). A high-accuracy map of global terrain elevations. Geophysical Research Letters, 44(11), 5844–5853. https://doi.org/10.1002/2017GL072874
〇アブスト
宇宙からのリモートセンシングで得られたDEMは陸域生態モデルなどにも使われる基盤データだけど、エラーが無視できないほどあるよ。
この研究で、SRTM、AW3D、ICESat/GLASのデータを使ってアルゴリズムを組んだら今まで±2mの精度の土地面積が39%しかなかったけど58%まで上がったよ。
今までのDEMは世界の主要な氾濫原(ガンジス川、ナイル川、ニジェール川、メコン川)の地形で精度が悪かったことが分かったよ。
〇そもそも地球規模のDEMって何に使われてるの?
主に下記に使われてるよ。
- 地震動評価のための地形分類(Hough et al.)
- 洪水氾濫モデリング(Yamazaki et al.)
- 全球湿地炭素動態(Laudon et al.)
- 土壌侵食と堆積物収量予測(de Vente et al.)
- リモートセンシングによる水マッピング(Pekel et al.)
先進国は航空機レーザ測量などで整備されているけど近年は世界中で使えるASTER GDEMやAW3Dなどが整備されてるよ。
〇何が問題なの?
誤差が凄い笑
- スペックルノイズ(数ピクセル):SAR画像で発生する地表面粗さに起因するノイズ
- ストライプノイズ(500 m〜50 km):ラジオメトリック補正誤差に起因するノイズ
- 絶対バイアス(20 km以上)
- 樹冠による上空側のバイアス
これらが10m以上の誤差を含んでいると、特に洪水解析で困る。
(アマゾン川の洪水は12mの水位変動だし、大体の洪水は数m程度の水位変動)
その他地滑りや土壌侵食、「垂直方向の」気象フラックスや「水平方向の」水文学的・生物地球科学的フラックス解析にも影響がある。
ローカルなエラー処理はやってきたものの、グローバルになるとエラー同士が打ち消しあう方向にも働く可能性があるため、一貫したエラー除去方法が必要とのこと。
〇どうやったの?
主要4成分エラー(スペックルノイズ、ストライプノイズ、絶対バイアス、樹高バイアス)を分離するために4段階の手法を開発。
- 2次元フーリエ変換フィルタを使用して非現実的な規則的な地形のうねりを検出することにより、ストライプノイズを除去
- ICESatとの重心標高の差を計算することにより、絶対バイアスを検出
- DEM、グローバルフォレストデータセット、および最低標高でのICESatを比較し、樹高バイアスを立木密度と樹高の関数として推定
- スペックルノイズと地形信号を統計的に分離する適応平滑化フィルターを適用
この順番にも意味があって
- ストライプノイズが絶対バイアスの推定に影響を与える可能性がある。したがって、最初に削除する必要あり。
- 最低標高でICESatを参照して樹高バイアスを推定するには、事前に絶対バイアスを削除する必要あり。
- 森林パッチにおける樹高の偏りは、平滑化フィルターによってスペックルノイズとともに完全に除去できるので、スペックルノイズを平滑化する前に樹高バイアスを取り除く必要あり
とのこと。
〇結果は?
良くなったよ笑
特にストライプバイアスと絶対バイアスを除去した結果、負のエラーは消えたよ。一部ピクセル内で山岳部など急峻な地形のところでは正のバイアスが残ったよ。
検証に使用したICESatデータは、今回の高精度DEM作成でも使用しているので、クロスバリデーションみたいな検証をしているとのこと。またイギリスの高精度ローカルDEMでも検証した結果よく一致したよ。
〇ほかに言えることはないの?
新しく作ったDEMでは、川の流路が明確に見えるようになったよ!
全球でエラー主要因を確認したら、ストライプノイズとスペックルノイズが世界の主要な氾濫原の起伏に影響を与えてるのが分かったよ。
こんなエラーがあると氾濫解析の精度が悪くなるよ。
樹高によるエラーも、湿地帯での水循環などに影響するよ。
〇結論
地球規模のDEMは色んなとこで使われてるから大事!
このDEM「Multi-Error-RemovedImproved-TerrainDEM(MERIT DEM)」は無料で入手できるよ。